アパートメント事業をメインに展開しているTATERU(タテル)は、預金残高額のデータ改ざんにより現在は株価が大きく下がっています。
それに加えて米中貿易摩擦の影響も懸念されるので、TATERU(タテル)株に対して不安を持つ株主も少なくないでしょう。
今回は問題となっている米中摩擦の影響からTATERU(タテル)の現在の株価推移、そして今後復活は望めるのか考察してみました。
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米中間の貿易摩擦が深刻化。住宅市場にも悪影響が次々と…
2019年7月末の日経平均株価は21,521.53円でした。
しかし、8月に入ると株価は一時2万1000円を下回る数値を出し、6日には2万500円台の安値となっています。
日経平均株価が急落した背景には、今問題が大きくなり長期化している米中貿易摩擦の存在があります。
まずは直近の経済状況とTATERU(タテル)株への影響について解説していきます。
円高・ドル安の進行で日経平均株価が急落
日経平均株価が一時2万1000円を下回ったのは、8月2日のことです。
参考:東証大引け 下げ幅令和最大の453円安 米中対立懸念で一時2万1000円割れ
2日の午前に一時580円を超える下げ幅となり、終値は前日比453円も下落して、2万1087円となっています。さらに、5日の午前には東京外国為替市場にて一時1ドルが105円台となる大きな円高・ドル安になる場面がありました。
円高は1月上旬から約7ヶ月ぶりの水準まで上がっており、輸入企業にとってはメリットと言えるでしょう。
ただし、日経平均株価はこれに連動して下がっており、国内企業や投資家にとっては大きな打撃となっています。
知っている方は多いと思いますが、ここで円高・円安により日経平均株価が動く仕組みを解説しましょう。
円高になればドルが安くなるので、輸入企業は海外からより多く購入でき、業績が上がりやすい仕組みとなっています。
一方、海外に顧客がいる輸出会社は外貨で販売代金を受け取ることになるので、円安の方が売上高は上がります。
円高・円安にはそれぞれメリットとデメリットの影響がありますが、日経平均株価に影響が出る理由は日本国内の輸入企業と輸出企業のバランスが均等ではないからです。
日経平均株価は東証一部に上場する銘柄のうち選ばれた225銘柄の平均株価となります。
この225銘柄に含まれる自動車産業やハイテク産業の多くは輸出企業にあたるため、円高になると業績が下がる傾向があり、結果的に日経平均株価も下がってしまうのです。
原因は米中摩擦への懸念
今回、円高・ドル安に進んだ原因は、アメリカのトランプ大統領が対中制裁関税の第4弾を発表したことです。
8月1日、トランプ大統領は「9月1日から中国からの輸出品3,000億ドル(約33億円)に対して、10%の関税を課す」と発表しました。
参考:米国、中国製品3000億ドル相当に10%追加関税発動へ 協議進展なく
追加関税の発表により米中の溝はますます深まり、世界経済への不安が懸念されて株が世界的に売られる状況となり、為替市場では円高が進んだのです。
今回の表明によりスマートフォンやノートパソコンなども関税の対象品目となっており、関連部品の生産を担う電気機械株に売りが集中しました。
他にも機械と自動車株の売りも膨らんでいます。
2019年に突入してから世界の株式市場はトランプ大統領の発言で振り回されている状況が続いています。1月から4月にかけては米中協議にてトランプ大統領は「合意まで少し」と発言し世界株高に推移しました。
しかし、5月になると中国が合意を守らないと制裁関税の税率を10%から25%にまで上げると発言し、世界中で株が急落します。
その後、米中協議の再開が発表され、合意へ向けて動き出す思惑から再び株は反発したのです。
7月末はパウエル連邦準備制度理事長会会長による利下げに対して後ろ向きな発言があり、それにより円安の傾向に進んでいました。
参考:FOMCが利下げ、パウエル議長は長期緩和サイクルの開始を否定
ところが、対中制裁関税の第4弾の発表で再度株安と円高の状況に進んでしまったのです。
影響は不動産・不動産投資関連の株にも
日経平均株価が下がれば日本企業全体で株安が進む可能性があり、不動産や不動産投資関連の株も例外ではありません。
ハイテク産業や自動車産業などに比べれば影響は少ないかもしれませんが、投資家の心理から売りに出されてしまうケースは少なくありません。
また、円高が続けば、日本の物件を保有する外国人にも影響を与える可能性があります。
海外投資家が日本で不動産投資を行っている場合、円高・ドル安が進めば円をドルに換金した場合、目減りは大きくなります。
投資家にとってはリスクなので、不動産の売りが集中し、不動産投資会社は外国人投資家の確保が困難になる可能性があるでしょう。
株価と不動産価格は連動しており、株価が低い時は景気が悪い時なので不動産価格も低くなる傾向があります。
特に都心のマンション・アパートは株価と連動が大きいと言われています。
日経平均株価の急落で全体的に株価が落ち込んでいるのであれば、TATERU(タテル)も多少の影響を受けることになるでしょう。
米中の対立がもっと深まれば、さらに世界経済は悪化の道を辿ることとなるでしょう。
しかし、トランプ大統領はそれを望んでいるわけではないので、2020年の大統領選までに何かしら手を打つ可能性があります。
また、2020年はAIやIoT、5G、ロボットへの投資が盛り上がる可能性は高く、TATERU(タテル)はIoT事業を手掛けているので良い影響を受けるとも考えられるでしょう。
そのため、長い目で見れば世界経済も回復が見込まれ、TATERU(タテル)株への影響も軽減されることが期待できます。
TATERU(タテル)の株価が下落中。早期退職優遇制度などの経営再建は進むか…
残念なことにTATERU(タテル)の株価は下落している状態です。
早期退職優遇制度を実施するなど経営再建に向けて動いていますが、本当に回復するのか不安なところでしょう。
次にこれまでの経緯と株価推移と共に、早期退職優遇制度が経営再建に効果的なのか考えてみました。
TATERU(タテル)の株価下落の経緯
TATERU(タテル)株がどれほど下がったのか、これまでの経緯や株価推移を時系列で見ていきましょう。
売上高がピークの頃の株価(2017年10月~12月)
2018年第4四半期を除くと売上高のピークは2017年第4四半期(10月~12月)にあたり、当時は四半期で約246億円の売上を出しています。
なお、2017年12月31日を基準日として株式分割が実行されています。
参考:平成29年12月期 決算説明資料
参考:株式分割並びに株式分割に伴う定款の一部変更及び株主優待制度の実質拡充に関するお知らせ
データ改ざんの発覚後の株価(2018年8月31日~9月12日)
データ改ざん問題が日本経済新聞に報道されたのは2018年8月31日でした。
9月3日になると株価は1,200円台にまで下落し、12日には終値337円までに大きく下がってしまいました。
再発防止策発表後の株価(2018年9月14日~12月4日)
9月14日に再発防止策の発表があり、その日の終値は363円となっています。
参考:当社従業員による不適切行為に対する再発防止策に関するお知らせ
早急に再発防止策を立てて発表したことが評価されたのか、その後株価は少し上昇していきます。
週明け18日は終値が443円となり、翌日19日には終値523円になりました。
さらに26日には高値854円まで上昇しています。
ところが、特別調査委員会の調査結果の発表が延長し、少しずつ株価は下がって12月4日に終値300円台へと戻ってしまいました。
調査結果の発表後の株価(2018年12月27日~2019年2月初旬)
12月27日に特別調査委員会による調査結果が発表されますが、その時の株価は終値354円となっています。
参考:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ
年末は市場全体で株価の暴落傾向にあったため、調査結果が発表されても好材料にはならなかった様子です。年明けから2月初旬は300円台を推移しています。
株主総会、関連子会社・販売用不動産の売却発表後の株価(2019年3月26日~4月末)
3月26日に株主総会が開かれ、株価が上がるかどうか注目されました。
25日の株価は終値255円でしたが、翌日26日は終値251円となっており逆に下がる結果となっています。
上昇しなかった理由は株主総会で悪材料は出ませんでしたが、好材料も出ていないためだと考えられます。
3月29日はTATERU(タテル)の関連子会社売却のIR情報が出ます。
参考: 連結子会社の異動(株式譲渡)に関する株式譲渡契約締結に関するお知らせ
関連子会社の売却でキャッシュが増えると予想されましたが、子会社で期待される売上がなくなるため、株価には特に影響せず200円台を推移することとなりました。
さらに、4月5日は在庫となっていた販売用不動産122棟の一括売却に関するIT情報が発表されます。
売却価格は非公開となっていますが、2018年12月期の連結売上高10%を超える金額だそうです。
決算資料ではその時期の売上高は79,149百万円であるため、約80億円分の価格になる可能性があります。
発表後の週明け8日の株価は高値284円となりましたが、大きな動きはなく依然と横ばいが続きました。
業務停止処分発表後の株価(2019年6月28日)
6月28日に関東地方整備局より7月12日~18日までの7日間、宅地建物取引業に関連する全ての業務が停止となる行政処分についてIR情報が出ました。
その日の株価は前日と同じ167円でしたが、週明け7月1日の終値は197円と30円も上昇し、一時高値215円にもなりました。翌2日も高値231円にも上昇しています。
行政処分という悪材料でありながら上昇した理由は、停止期間が7日と短く、管理業務には支障がないので予想よりも軽かったからでしょう。
早期退職制度の実施と退職者による内部告発のリスク
2019年7月5日に早期退職優遇制度の実施を発表しています。
概要では2019年10月31日を退職予定日として、最大160人程度で早期退職者を募集しています。
ただし、早期退職では退職した従業員からの内部告発や情報流出が懸念されます。
退職する人の中にはメディアからの報酬狙いから嘘を付いてまで告発しようとする人や、辞めるから問題ないと思って守秘義務に反する人も少なくないのです。
しかし、内部告発は過去の事例を見ても、告発した側に刑事・民事責任が問われてしまう可能性が高いです。
大半は会社から一方的に退職を進められ、その恨みから内部告発にいたるケースが多いとされています。
TATERU(タテル)の場合はあくまでも希望制であるため、強制的なクビではありません。
その上、希望者には再就職の支援も行うとしているので、不満は少ないと考えられ、内部告発のリスクも低いでしょう。
そのため、会社が内部告発によって脅かされる心配はほとんどないと言って良いでしょう。
今後は元従業員の動きや、決算などに注目してくことが重要
TATERU(タテル)は様々な対策を行うことによって、経営の立て直しを図ろうとしています。
そんなTATERU(タテル)の今後を予想するためには、元従業員の動きや決算などに注目していく必要があるでしょう。
最後に、TATERU(タテル)の今後を予想するために必要なポイントをピックアップしてご紹介しましょう。
これから注目すべきポイントは何か?
今後のTATERU(タテル)の見通しを予測していくために注目しておきたいポイントは、早期退職優遇制度が終了するタイミングや次の四半期決算、営業再開に関するリリースだと言えるでしょう。
早期退職優遇制度には前述したようなリスクもありますが、強制的に退職させるのではなく、希望する人の退職を促す制度となっています。
そのため、大きなリスクはないと考えられるでしょう。退職だけではなく再就職支援も行うため、社員の将来をしっかりと見据えた制度でもあると考えられます。
また、次の四半期決算ではこれまでの対応の結果が現れる可能性が高いと言えます。
8月7日現在では、早期退職優遇制度の希望者数がどれほどなのか、特別退職金総額がどのくらいになるかという詳細がまだ分かっていません。
しかし、今後のライフプランをしっかりと支援できるような制度だと考えられるため、これから決定事項が発表されることでしょう。
TATERU(タテル)は今回の問題を受けて、様々な対策を行ってきました。
その中で、直近に行われたものとして早期退職優遇制度が挙げられます。
この早期退職優遇制度が終了したタイミングや次の四半期決算が出されるタイミング、営業再開のリリースが発表されるタイミングは、TATERU(タテル)の株価に良い影響を与える材料だと考えることもできるのです。
なぜこれらのタイミングに注目すべきなのか?
早期退職優遇制度が終了したタイミングや次の四半期決算が出されるタイミング、営業再開のリリースが発表されるタイミングは、TATERU(タテル)の今後の動きを把握するために重要なものだと言えます。
なぜかというと、TATERU(タテル)の安定性や成長性を知るための指標になるからです。
TATERU(タテル)の安定性について
TATERU(タテル)の安定性は、現状だと危ういと思われてしまう部分も少なくありません。
しかし、財務基盤を整えるために様々な対策を行っていることから、安定感のある企業へと復活できる可能性はあるでしょう。
経営陣の報酬カットや辞任、株主優待の廃止などを行ったことにより、財務基盤を整えるための準備が出てきていることを示しています。
また、キャッシュも確保できているため、安定性はあると考えられるのです。
子会社の売却も行おうとしましたが、契約が解除されたため特別損益が発生することはなくなりました。
経営を立て直すための資金繰りに奔走していることもこれらの対策から伺えるため、今後は安定感のある経営ができるようになっていくのではないかと考えられるでしょう。
TATERU(タテル)の成長性について
TATERU(タテル)は、アパートメント事業の再開と新規事業の成長を目標に動き出しています。
2019年12月期第1四半期決算説明資料によると、2019年3月末時点のアパート入居率は99.2%となっているため、問題発覚後も安定した推移を保っていることが分かります。
不動産事業で問題を起こしたため、アパートメント事業は低迷すると考えられていましたが、正反対の結果となっているのです。
それはTATERU(タテル)がしっかりと対策を行えたことが大きなポイントになったと考えられます。
今後は、アパートメント事業も問題発覚前のように再開していくことでしょう。
また、新規事業もTATERU(タテル)は行っています。
TATERU(タテル)が行っている新規事業は、IoT関連の事業です。
アパートメント事業だけではなく、IoT事業も手掛けてきたTATERU(タテル)だからこそできることだと言えます。
Apartment kitという賃貸経営プラットフォームを提供することで便利な暮らしを実現するためのサポートを行い、オーナーや管理会社の業務効率を高めることにもつながります。
セキュリティの向上にも貢献できるため、長期不在や留守中も安心できるようになるのです。
アパートメント事業とIoT事業を手掛けているTATERU(タテル)は、今後も大きく成長していく可能性を秘めた会社だと言えるのではないでしょうか?
TATERU(タテル)の安定性や成長性は、株価の上昇にも大きな影響をもたらすポイントです。
現在TATERU(タテル)の株価は、まだまだ低迷した状態にあります。
しかし、安定性や成長性があることが分かり、TATERU(タテル)の立て直しが目に見える形で現れていけば、株価は適切な数字まで上昇すると考えられるでしょう。
株主にとって今はとても不安な状況にあると考えられますが、TATERU(タテル)にとって好材料になるものはたくさんあります。
そのため、TATERU(タテル)に株価は適切な数字まで上昇する可能性が非常に高いのです。
TATERU(タテル)の今後の動向を見極めながら、株価の動きにもぜひ注目してみてください。