TATERU(タテル)は融資の審査に関わる預金データを改ざんした不正行為が問題となっています。
社長や経営陣に批判的な声があるのは当然のことですが、本当に今やるべきことは批判だけでしょうか?
TATERU(タテル)は特別調査委員会の調査を受け、再発防止策の提出や取締役の辞任など、必要な対応をとっています。
では、TATERU(タテル)でアパートメントを取得しているオーナーは何をすることが正しいのでしょうか?
今回はTATERU(タテル)の預金データ改ざん問題の概要や問題の性質、オーナーが取るべき行動や騒動後の反応をまとめてご紹介します。
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預金データ改ざん問題で揺れるTATERU(タテル)
ITを用いた不動産管理が注目されているTATERU(タテル)に、預金データの改ざんが発覚しました。
この問題が表に出たのは2018年8月末のことです。
まずは預金データ改ざん問題の概要やTATERU(タテル)のその後の対応、業績への影響についてご紹介しましょう。
TATERU(タテル)のデータ改ざん問題について
TATERU(タテル)では一部の社員により預金残高のデータを改ざんしていたことが発覚し、その事実を認めています。
事実が表に出たきっかけは、一人の男性が融資の審査通過に疑問を持ち、西京銀行に提出書類を開示してもらったことでした。
本来、この男性は資金力が低く、アパートメントの取得に必要な融資は厳しい状況でした。
しかし、TATERU(タテル)の担当者は問題ないと、必要なデータを受け取って銀行に提出しました。
その際、資料は正しく提出されておらず、本来の預金残高よりも水増しさせたものが提出されていたのです。
この改ざんは2010年から始まったとされており、幹部が部内に改ざん禁止を通告したものの、その後も不正行為が続いたのです。
問題が発覚し、不正に関わったのは31人となっており、2,269件中350件(約15%)の物件で不正が見つかりました。
なお、決済権が営業本部長にあったため、社長や経営陣の関与はなかったとされています。
データ改ざん問題が起きた原因
TATERU(タテル)はリーマンショックの影響を受けて売上が伸びない時期もありましたが、その後は在庫を持たない独自のビジネスモデルで売上を回復していきました。
上記の資料でも分かりますが、東証マザーズに上場した2015年から改ざん問題が露呈した2018年まで右肩上がりの売上高を記録しています。
不正があったのは全体の15%なので、大方は実力で業績を上げていることが分かります。
それなのに、なぜデータの改ざんが必要だったのでしょうか?
特別調査委員会の報告書を読んでいて考えられるのは、営業担当者に厳しい営業目標が課せられていたことです。実際には経営陣が実績や市況のデータを分析し、現実的な営業目標を設定していたのですが、このなかには不正行為で作られていた売上も含まれており、正しい判断ができるデータでなかったということです。
売上が大きくなればなるほど設定される目標もより厳しくなり、一部の社員は不正をし続けないと目標を達成できないと考えた可能性があります。
報告書によれば、厳格な上下関係や率直に意見が言えない風土がそのような状況を生んでしまったのではと指摘されています。
改ざん問題発覚後の業績
画像はTATERU(タテル)の決算資料に記載されている成約数の推移です。
改ざんが発覚する前の2018年12月期2Qの成約数は255件でしたが、その後の3Qは45件にまで減少しました。4Qは35件とさらに減少しており、改ざん問題の影響を受けていることが分かります。
一時は改ざん問題の発覚でアパートメント事業は取り消しが相次ぎ、クラウドファンディング事業も新規ファンドを中止する対応により、在庫を抱えなければならない事態が発生しました。さらに、事態を重く受け止めて広告も自粛していました。
しかし、経営破綻という危機にまでは発展していません。また、今は成約の受注取り消しも徐々に減っています。
少しずつですが、信頼回復に取り組んだ結果が反映されているのだと思います。
上記の売上高の図表でも4Qの売上高は283億円を超えており、かつ利益も黒字をしっかりキープしているので倒産するリスクは今のところないと考えられます。
TATERU(タテル)の対応について
まず問題が発覚した当該顧客に対しては、謝罪と本人の要望から手付解除の対応をしていました。
顧客は50万円の手付金を渡しており、契約では2倍の100万円を支払うことになっていました。
TATERU(タテル)は事態を重くみて契約どおり、手付金は倍額で支払い手付解除を行っています。
また、不正事実をより明らかにするため、弁護士を筆頭に特別調査委員会を立ち上げ、第三者による内部調査を行いました。
今後、同様の問題が起きないように再発防止策の発表し、業務フローの見直しを始め、コンプライアンスの徹底を約束しました。
TATERU(タテル)のアパートメントを保有するオーナーに対しては、担当者個人がそれぞれ対応にあたっているようです。
他にも営業部門をまとめていた常務の解任、社長を含む10人の取締役は月額報酬を減らすといった処分をしています。
時間がかかると思いますが、地道に信頼回復を図っていくことでしょう。
社長や経営陣に対する批判の声が集まる一方で、他の不祥事とは性質が異なるとの指摘も
不正問題に関しては社長と経営陣の関与は認められていません。
しかし、今回の問題は会社のイメージダウンにつながるので、社長や経営陣に批判の声が集まるのは当然と言えるでしょう。ただ、中には他の不祥事とは質が違うのでは?という意見を度々見かけます。
世間の声と共に、不動産に関する直近の不祥事とTATERU(タテル)の改ざん問題の性質の違いを見ていきましょう。
風当たりの強い意見たち
社員含めてオーナー、関連企業など不安な人も多くいる状況で社長が公の場に出て謝罪も出来てないんだから。
引用元:https://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/575540/res/647/
まだ謝罪が不足しているという批判があります。
確かに一部メディアでは問題に対して真摯に受け止め、再発防止に務めると話しているものの、謝罪が表に出ていないことが不安要素につながっていると考えます。
公に出てきて謝罪にこだわる必要はないと思ってます。
まずは一日でも早く、会社経営を立て直すこと、次のビジネスモデルを構築すること、それにより、オーナーに還元をしてもらえればいいです。
引用元:https://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/575540/res/650/
一方、経営を早く立て直すことがオーナーにとってもプラスになると、謝罪よりも立て直しの優先を重視する意見もありました。
風当たりが強いですが、それでも一部のオーナーからは頑張ってほしいという温かい声もみられます。
他の不祥事との違いとは?
口コミでは他の不祥事との性質の違いが指摘されていました。
TATERUはレオパレスよりは全然マシでしょう。預金額改ざんの件で入居者には直接迷惑はかからないので・・・
引用元:https://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/575540/res/587/
“レオパレスのアパートオーナーも部屋を借りた人も被害者です。
たぶんほとんどの人が救済されません。オーナーは破産もあると思います。
引用元:https://www.e-mansion.co.jp/bbs/thread/575540/res/586/
直近の話題だとレオパレスの施工不良の発覚が問題となりました。
この問題の概要は、天井の耐火性が不足していることから多くの入居者に引越しが求められました。
なお、今後も被害者は増えると予想されています。
施工不良問題は入居者だけではなく、家賃収入を得ているオーナーやサブリース業界にとっても深刻な事態です。
その点、TATERU(タテル)はアパートメントに直接悪影響を与える問題ではなく、引き続き入居してもらうことが可能です。
アパートメントを売るための不正はあったものの、施工不良や違法物件などアパートメントの品質には問題がありません。
入居者に向けての安全対策やオーナーの損失を与える点を考えると、施工不良問題の方が悪質な面が大きいのではないでしょうか?
融資の改ざん問題では、静岡に本店があるスルガ銀行が記憶に新しいかと思います。
サブリース物件への融資に対して不正が行われており、審査基準が通る書類に改ざんされていました。
少なくとも795件の改ざんが発覚しており、仲介している不動産会社に書類のねつ造や調査のタイミングを教えるといった不正が明らかになっています。
不動産会社と金融機関の両方が不正事実を知っているという点が性質の悪さを感じさせます。
TATERU(タテル)の問題の場合、西京銀行は不正という事実を一切知らずに審査していたので、速やかに融資の停止をしています。
スルガ銀行の場合はオーナーに賃金が払われていないという告発で、不正が明らかになりました。
一方、TATERU(タテル)の場合は不正の影響で賃金が未払いという事態にはなっておらず、その点からも性質の違いが分かるでしょう。
TATERU Apartmentのオーナーが社長を批判する前に今すぐすべきこと
TATERU Apartmentだけに限った話ではありませんが、アパート経営を行うオーナーが社長を批判する前にやるべきことがあります。
アパートメントのオーナーが経営を成功させるためにはどのようなことに気を付けたら良いのでしょうか?
リターンよりもリスクを考えること
アパート経営を検討している方、あるいは実際に行っている方は「アパート経営でどのくらいの収入が得られるか」を考えがちです。
しかし、オーナーに向いている方は「どんなリスクがあるか」という支出に注目する傾向にあります。
空室や家賃滞納、部屋の修繕費などアパート経営には多様なリスクが伴います。
こういったリスクを想定しておけば、よほど想定外なことが起きなければある程度の問題を切り抜けることができるでしょう。
この点を曖昧にしておくと、リスク発生時に迅速な対応ができず、一時的な支出が増えローン返済に追われる可能性が考えられます。
入居者の立場を考えられますか?
そもそもアパート経営とは入居者なしでは成り立たないものです。
アパート経営をすると決めた以上は、入居者に長く住んでもらわなければなりません。
入居者はオーナーのためにアパートを成約する訳ではないので、不便な面やリスクがあればすぐに解約手続きを申請してくるでしょう。
そのため、オーナーは入居者が少しでも快適に暮らせる居住空間を提供できるよう努めることが必要になります。
建物自体に問題があったり騒音など入居者同士のトラブルが頻繁に起こったりするようでは毎月賃貸を支払う入居者も納得できません。
そうならないためにオーナーは入居者の立場を重要視し、ずっと住み続けたいと思うようなアパート管理を考えるようにしてください。
自分の利益よりも入居者のメリットを考えられるようなオーナーになれば、自然に成約数も伸びていくことでしょう。
「できるだけ修繕費をかけたくない」、「クレーム対応が面倒」、「クリーニングを減らし清掃代を浮かせる」など経営側の利益ばかりにこだわっていては、確実に入居者は離れていきます。
アパート経営はオーナーになってからが重要
インターネットなどで不動産経営の広告を見たことがある方はご存知かと思いますが、このような広告には「アパートメントのオーナーになれば自動的に収益が入る」と謳ってあります。
確かにアパート経営というものを総合的に支援してくれる事業もありますが、一般的な不動産会社は売買が成約するまでのアドバイスまたは管理などの仕事が中心です。
そして最終的にアパート経営の舵取りをするのはオーナーが自らする仕事で、経営が始まってからが本格的に事業をスタートさせることになるでしょう。
アパート経営における収入源は「家賃収入」ですから、物件情報はネットなどの情報だけでなく、実際の物件を確認するために現地に足を運ばなければなりません。
物件だけに限らずアパート周辺の騒音や利便性など治安などは自分の目で確かめるべきです。
1つの物件に対して10回程度足を運ぶと、ある程度物件に関する情報は把握できます。
オーナーになることがゴールと考えている人は、オーナーになってからの長期的な経営計画を立てるようにしてください。
アパート経営を成功させるためには、不動産関連の情報をはじめ今後数十年後の市場動向を知っておく必要があります。
TATERU(タテル)の物件を保有している方は、失敗の中でも対応できるリスクに備え近隣の賃貸物件と比較して打ち勝つ要素を分析してみましょう。
再発防止策を発表したTATERU(タテル)オーナーの反応は?
TATERU(タテル)は改ざん問題が発覚した後、従業員による不適切行為に対する再発防止策を発表しました。
では、この再発防止策が発表された後のTATERU(タテル)のオーナーはどのような反応を示しているのでしょうか?
再発防止策の内容について
再発防止策発表後のTATERU(タテル)オーナーの反応を紹介する前に、ここで再発防止策とは一体どのような対策を言うのか内容についておさらいしておきましょう。
- 業務フローの変更
- 契約適合性手続きの厳格化
- 内部監査室の業務モニタリング
- コンプライアンス遵守体制の見直し
- 内部通報制度の充実化
以上のように具体的な内容を提示し、再発防止に努めることを公言しています。
これに対し発覚した不祥事に対してなすべきことをしているという評価が多く寄せられていました。
例えば、TATERU(タテル)は再発防止策を発表すると同時に、TATERU Fundingの希望者に対する出資金返金も完了させています。
改ざん問題発覚後から約2週間でTATERU Funding会員への出資金返金、調査委員会設置、委員会調査の発表を待たずして再発防止策を発表するなど対応力の速さについても高く評価されていたようです。
TATERU(タテル)オーナーの反応は?
TATERU(タテル)はどうやって事業を立て直し、アパートを経営しているオーナーに改善策を提案するのか検討した結果、再発防止策を発表しましたが、先程引用した口コミのオーナーは以下のようにも述べています。
私は公に出てきて謝罪にこだわる必要はないと思ってます。
まずは一日でも早く、会社経営を立て直すこと、次のビジネスモデルを構築すること、それにより、オーナーに還元をしてもらえればいいです。
もう、十分痛い目を見たでしょう。再発防止です。
TATERUさんの経営状況が良くなることが、私達オーナーにもプラスに働きます。
不正問題は会社全体のイメージダウンになってしまうことは避けられませんが、不正行為に関わっていないアパートオーナーにも少なからず影響します。
問題対策へのアクションの速さから、誠実に対応してくれていると評価しているオーナーも少なくないようです。
不祥事が起きた時、重要なのは問題が起きた後の対処の仕方が肝心なのではないかという見解もあるようでした。
不正問題で下がり続けるTATERU。
現物株はやばいが、実はここで一棟アパートのオーナーしてます。
しっかり利益も出てるので、レオパレスとは本質的に違うと思う。
でも不動産はおれ向いてないかな。笑— KING (@king789102) 2019年2月14日
他の企業が起こした不祥事とTATERU(タテル)の改ざん問題は、内容の質が違うと指摘しているオーナーもいました。
再発防止策を発表した後は、着実に売上を伸ばし成果につながっていると受け止めているオーナーも少なくないようです。
今回は、データ改ざんが発覚したTATERU(タテル)の問題点とその性質について検証してきました。
問題発覚後は、TATERU(タテル)の経営者である社長が批判される事態に陥りましたが、その後再発防止策を公表してからは総合的に成約数が伸びているのが現状です。
信用を取り戻すには、長期的な期間が必要になるかもしれませんが、この先も真摯に成長を続けてほしいです。