TATERU(タテル)は、顧客の預金データを改ざんするという問題を起こしています。
TATERU Apartmentは売上や成約数も堅調に伸ばしていましたが、改ざん問題発覚後は信頼を大きく失い、事業にも影響が出てしまっています。
しかし、TATERU(タテル)は改ざん問題発覚直後に再発防止策を発表し、特別調査委員会を立ち上げて今後取り組むべき事柄や課題を明確にし、迅速に取り組んでいます。
TATERU Apartmentのオーナーに対しても、今後も安心して運営していけるよう、サポート体制を整えているのが特徴です。
ただ、改ざん問題の代償は大きく、中にはTATERU(タテル)が倒産するのではないかと不安に感じている方もいるでしょう。
実際に一部報道ではTATERU(タテル)に対して業務停止命令の行政処分が下されるとの情報もあります。
アパートの施工、管理を手がける東証1部上場のTATERUが、建設資金の借入希望者の預金データを改ざんしていた問題で、国土交通省は同社に業務停止命令を出す方針を固めた。預金残高を実際より多く見せ金融機関の審査を通りやすくしていた。国交省は会社ぐるみで改ざんし、不正が全国に広がっていることを問題視し、行政処分に踏み切る。
引用:TATERUに業務停止命令へ 融資資料改ざんで国交省処分(日本経済新聞)
そこで、今後TATERU Apartmentの事業や今後の行方、新規事業について考察していきます。
Contents
TATERU Apartment(タテルアパートメント)事業の今後の行方は?
まず、TATERU Apartmentの2017年・2018年の売上や成約数を比較してみます。
預金データの改ざん問題が発覚したのは2018年ですが、売上や成約数はどのようになっていたのでしょうか?
今後も売上・成約数は伸びていく可能性が高い
TATERU Apartmentの2017年、2018年の売上高と成約数は以下のようになっています。
2017年
・1期:111億373万円(成約数:192件)
・2期:153億5069万円(成約数193件)
・3期:158億7177万円(成約数207件)
・4期:246億9025万円(成約数247件)
2018年
・1期:146億7897万円(成約数:254件)
・2期:226億7317万円(成約数:255件)
・3期:134億6244万円(成約数:45件)
・4期:283億3475万円(成約数35件)
上記の売上高と成約数を見てみると、顧客の預金データ改ざん問題発覚直後の売上高と成約数は大きく落ち込んでいます。
しかし、注目して欲しいのは売上高2018年4期の売上高です。
成約数は落ち込んでいますが、売上高は一時的に下がっただけで、4期目には過去最高の売上となっています。
TATERU(タテル)は、2017年以前も堅調に売上・成約数を伸ばしてきました。
改ざん問題自体は許されるべきものではありませんが、問題が発覚直後の迅速な対応と、これまで積み上げてきた実績と信頼が2018年4期の売上に影響したのではないでしょうか?
また、TATERU(タテル)はTATERU Apartmentのオーナーに対してサポート体制を整え、不動産賃貸の運営に影響がないよう務めています。
改ざん問題が発覚した直後、TATERU(タテル)は業務フロー改善・契約適合性手続き厳格化・業務モニタリング実施・コンプライアンス遵守体制の見直しなど、様々な対応を行っています。
また、連結子会社の異動や販売用不動産売却なども行い、会社全体を立て直すために全力で取り組んでいるのです。
再発防止策を発表し、特別調査委員会を設置しているという点を踏まえても、信頼を取り戻そうとしていることが分かります。
これまでの対応を見ても、TATERU(タテル)は今後も信頼回復に向けた取り組みを続けていけば、売上が伸びていく可能性も高いと言えるでしょう。
TATERU(タテル)のオーナーは問題なく運営できている
現在、営業を自粛していることもあり成約数は伸びていませんが、TATERU Apartmentのオーナーは、改ざん問題発覚以降も問題なく不動産賃貸を運営しています。
SNSや掲示板などの声の中には、問題なく運営できている口コミも見ることができます。
タテルの場合は、金融機関への不正としては、規模はかなりのものだけど、オーナーの経営に大きく影響を及ぼすものではなく、被害は限定的。
引用元:https://finance.yahoo.co.jp/cm/message/1835618/2cbf9cbe41201ab89304ab3e7bf1a720/111/1057
こちらの口コミにもあるように、TATERU(タテル)の改ざん問題の規模は大きくても、実際の所、オーナーの運営には大きな影響が出ていません。
同業他社では、TATERU(タテル)以上にオーナーへの被害が大きい不正が発覚したケースもあります。
TATERU(タテル)は、不正発覚後もオーナーが安心して運営できるようサポートしています。
このことからも、既存のオーナーからの信頼度は高いと言えるのではないでしょうか?
TATERUが起こした不祥事は、データの改ざんです。
レオパレスのように違法建築が発覚した、アパートの性能が実は低い、とかではありません。
なのでブランドの価値は低下しましたが、商品であるアパート自体の価値は落ちていないと言えます。
引用元:TATERUは倒産しないと思う TATERU Apartment オーナーの運営報告2019年5月
そもそも、TATERU Apartmentの既存オーナーはIoTを駆使したアパートメントやデザインアパートメントなどの不動産物件を高く評価しています。
他の不動産会社とは異なるデザイン性や、時代のニーズに沿うIoTアパートメントの運営など、不動産そのものの価値も高いと言えます。
不動産の価値が高いからこそ、改ざん問題が発覚しても問題なく運営できているのではないでしょうか?
新規事業のTABICTとはどんなサービスなのか?全体に占める割合は?
TABICTは、TATERU(タテル)の宿泊事業を行っていた株式会社TATERU bnbが社名変更し発表された新名称です。
株式会社TATERU bnbは2019年4月25日に株式会社TABICTへと社名変更し、「旅をする全ての人々に最高のサービスを提供しよう」というコンセプトで取り組んでいます。
TABICTに社名変更した理由とは?
株式会社TATERU bnbは、なぜTABICTに社名変更したのでしょうか?
理由は、TABICTという名称の意味が関係しているようです。
TABICTのICTには、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」という意味が込められています。
近年は、パソコンをはじめスマホ・タブレット・スマートスピーカーなどの通信技術が急速に発達しているのが特徴です。
情報通信技術を活用することによって、便利に快適な旅ができるだけでなく、これまでになかった新しいサービス構築ができると考えているのではないでしょうか?
また、TABICTにはこの他に「最高クラス(BIC)」という意味も込められています。
「新しい旅を作る」という会社のコンセプトもあり、誰も経験したことのないような最高な旅を実現させようと取り組んでいると言えるでしょう。
TATERU(タテル)は、TATERU Apartment事業だけでなく、宿泊事業にも力を入れていたため、改ざん問題発覚後も他の事業で会社を支えることができています。
将来的にはIoTを中心とした様々な事業に参入し経営戦略を立ていくのではないでしょうか。
TATERU(タテル)では、宿泊事業のほか不動産ポータルサイトやクラウドファンディング事業なども展開しているため、メイン事業であるTATERU Apartment以外にも力を入れようと取り組んでいるのでしょう。
どのようなサービスを提供しているのか?
TABICTでは、TRIP PODをはじめとする様々なサービスを提供しています。
ここでは、いくつかピックアップしてご紹介しましょう。
TRIP POD
TABICTが提供しているTRIP PODは、IoTを活用したスマートホテル経営が行えるアプリを提供しています。
ホテルにチェックインする時や、チェックアウト後の清掃、宿泊客への対応などが全てアプリで行えるという画期的なサービスです。
アプリで簡単にスマートホテルが経営できるだけでなく、不明点や心配なことはチャットでコンサルタントに相談できるという特徴もあります。
土地選びから経営の管理運用はすべて任せられるので、初心者にも利用しやすいサービスと言えるでしょう。
bnb kit
bnb kitはIoTを活用したスマートホテルを提供するサービスです。
テンキーや交通系ICカードなどで開錠可能なSMART LOCKや、チェックイン手続きや宿泊者台帳記録ができるCHECK-IN PAD、宿泊客に貸し出しするTRIP PHONEなどが標準装備されています。
宿泊客が求めるニーズに沿ったサービスを提供できるのが特徴です。
TRIP PHONE
TRIP PHONEは上記のbnb kitで宿泊客に貸し出しているIoTデバイスです。
滞在期間中にコンシェルジュサービスを利用できることが特徴で、宿泊施設周辺の飲食店や交通機関の案内などが確認できるほか、予約することもできます。
TRIP PHONEに関しても多言語に対応しており、インバウンドにも貢献できます。
bnb CLEANING
bnb CLEANINGは宿泊施設のスマート清掃代行サービスです。
清掃依頼から完了までをお任せできるので、業務効率を向上させられるという魅力があります。
宿泊施設の予約受付から清掃確認まで行えるクラウド型PMSのbnb BOOKと同時に利用できます。
宿泊事業に特化したサービスを幅広く提供しているため、スマートホテル経営に興味がある方や宿泊事業運営者にとっても活用しやすいサービスと言えるでしょう。
TATERU(タテル)は、宿泊事業にもIoT技術を取り入れることで、これまでにない新たな旅を提案していこうとしているのです。
新規事業に手を出していたり、小会社を売却していたりするけど、財務状況は大丈夫なのか?
オーナーからしてみれば、TABICTをはじめ宿泊事業に力を入れていたり、子会社売却をしていたりと言った状況に不安を感じている方もいるでしょう。
そこで、TATERU(タテル)の財務状況を確認してみましょう。
固定比率はどうなっているのか
固定比率は、財務分析をするための指標であり、会社の経営指標となっています。
TATERU(タテル)の固定比率を計算すると、以下のようになっています。
参考指標:http://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS02693/61ccdd4d/4f16/4dba/9c64/b304d478a98b/S100FRZL.pdf
固定資産÷自己資本(純資産)×100=固定比率(%)
TATERU(タテル)の固定比率
52億5712万1000円÷168億2025万7000円×100=31%
2019年12月期の第1四半期決算短信によると、TATERU(タテル)の固定資産は有形固定資産・無形固定資産などを含め、約52億円となっています。
自己資本(純資産)は約168億円となっています。
これをもとに計算すると、TATERU(タテル)の固定比率は約31%です。
固定比率は、固定資産に投資した額がどの程度自己資金でまかなうことができているのかを示すものです。
通常、固定資産に投資した金額は回収するのに長期間かかると言われているため、返済義務のない自己資本でどれだけまかなうことができるかが重要なポイントになってきます。
例えば、固定比率が100%以下の場合、固定資産よりも自己資金の方が大きいことが分かります。
TATERU(タテル)の固定比率は31%なので、十分な自己資金を有しており、固定資産が賄えるだけの財務状況であると言えるでしょう。
仮に固定比率が100%以上だった場合、固定長期適合率を計算するとより明確に会社の支払い能力が把握できます。
TATERU(タテル)は31%と100%以下だったので会社の経営は安全な水準にあると言えるでしょう。
TATERU(タテル)は自己資本比率も問題なし
固定比率に続いて、自己資本比率について見ていきましょう。
自己資本比率は、会社の総資本のうち、どれくらい自己資本(純資産)でまかなえているのかを示す指標です。
では、TATERU(タテル)の自己資本比率はどのようになっているのでしょうか?
自己資本(純資産)÷総資本×100=自己資本比率(%)
TATERU(タテル)の自己資本比率
168億2025万7000円÷294億8510万1000円×100=57%
総資本は株主から払い込みを受けた資本金と資本剰余金、社内に留保されている利益剰余金を合わせた金額を指します。
TATERU(タテル)の総資本は約294億円となっているので、それをもとに計算すると自己資本比率は57%という結果になりました。
自己資本比率は、会社の財務基盤がどれくらい安定しているのかを示すものです。
比率が高ければ、返済義務のない自己資金で事業を運営していることになります。
TATERU(タテル)の自己資本比率が57%でしたが、一般的に自己資本比率は40%以上が目安とされ50%を超えてくると優良とされます。
実際に計算してみると、TATERU(タテル)は会社の運営を立て直すために新規事業に力を入れ、子会社を売却していますが、財務状況で不安視する点はないと言えるでしょう。
顧客の預金データ改ざん問題をきっかけに売却した不動産についても、販売用の不動産のみを売却しており、オーナーにとって大きな影響はありませんでした。
TATERU Apartment事業だけでなく、宿泊事業をはじめその他の事業にも力を入れることができるというのは、財務状況が安定している影響ではないでしょうか?
改ざん問題でTATERU(タテル)の財務状況を不安視する声は少なくありません。
しかし、中長期的に見ても心配する必要はないと言えるでしょう。
すべてが未来への布石につながっているのか!?TATERUの事業展望について。
再起に向かっているTATERU(タテル)ですが、IoT市場の拡大やインバウンド需要の観点から今後の事業展望について考えてみました。
TATERU(タテル)の新規事業は将来の可能性がある
TATERU(タテル)の新規事業は、IoT市場やインバウンド需要の拡大が見込まれるので、将来の可能性を秘めていると言えます。
その根拠はどこにあるのか、まずはIoT市場とインバウンド需要の今後の予想を見ていきましょう。
IoT市場規模の予測
2018年9月にIDC Japanが発表した国内IoT市場規模予測によれば、年間平均成長率は2022年までに15.0%になると予想されています。
参考URL:https://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20180912Apr.html
2017年の支出額は5兆8160億円なので、予想通りの成長率なら2022年は11兆7010億円の市場規模に拡大するでしょう。
また、同社が2018年3月に発表した用途別・産業分野別の予測では、2023年のIoT支出額(個人消費者)は、組立製造の次に大きな市場となると見込まれています。
参考URL:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ44906519
その理由は、国内外の大手ベンターがスマートホームやスマート家電といった分野での新サービスの創生や拡大に力を入れているからと言われています。
インバウンド需要の予測
日本政府は東京オリンピックの誘致が決定した後、東京オリンピックが開催される2020年までに訪日観光客数2000万人を目指すと目標を掲げました。
その目標はあっさりと突破し、2016年に2400万人の外国人が日本に訪れ、その数は年々増加しています。
参考URL:https://www.sankei.com/politics/news/170106/plt1701060037-n1.html
現在の目標は2020年までに4,000万人としており、インバウンドによる旅行消費額は8兆円を目指しています。
過去にオリンピックが開催された場所では開催前後でインバウンドが増え、終了後も増加が続いたというデータがあります。
2025年には大阪万博が再度開かれる予定であり、政府は2030年までインバウンドを推進する見込みなので、インフラ整備やサービス展開で市場の急成長は今後も続くと言えるでしょう。
急成長しているIoT・インバウンド企業
スマートホーム市場では、AmazonやGoogleなど米国のテクノロジー企業が先陣を切っており、AIアシスタント機能が付いた製品は日本でも人気です。
国内でもソニーがIoTスタートアップ企業を立ち上げ、スマートロックをはじめとしたスマートホームを手がけ注目されています。
参考URL:https://jp.techcrunch.com/2014/12/12/jp20141212crio/
インバウンド分野では、総合不動産各社がホテル事業の強化を進めています。
例えば、三井不動産は2020年までに客室を現在の1.5倍までに増やし、宿泊に特化した新しいホテルブランドの設定を発表しました。
三菱地所もホテル開発・運営、リゾート開発分野を全てまとめ、ホテル事業の強化に努めています。
参考URL:https://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1906/13/news064.html
ベンチャー企業のtriplaでは、AIチャットボットと多言語に対応した有人オペレーターのサービスを提供しており、宿泊施設での導入が加速しています。
参考URL:https://corp.tripla.jp/
大手、ベンチャー、スタートアップ問わず、IoTの拡大やインバウンド需要を狙う企業はたくさんあるようです。
市場の傾向や各企業の成長を見てみると、IoT分野とインバウンド分野は今後も発展が続くと言えます。
TATERU(タテル)はアパートメント事業をメインとしていますが、今後はIoT事業やインバウンドを狙った宿泊事業も強化していくと予想されます。
長期に渡って求められる事業となりそうなので、少しずつ経営状態も回復することでしょう。