TATERU(タテル)はデータ改ざん問題が発覚してから株価も急落し、メイン事業であるIoTアパートの新規顧客開拓に向けた営業がストップしている状態です。
そんな中で、先日国土交通省から業務停止命令処分が下されるとの報道がありました。
もし、実際に業務停止命令が出てしまった場合、TATERU(タテル)はどうなってしまうのでしょうか?
今回は、業務停止命令がどういったことを意味しているのか、改ざん問題を改めて解説しつつ、現在TATERU(タテル)が置かれている状況はどうなっているのかを詳しくご紹介していきます。
TATERU(タテル)の現状が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
【追記】
2019年6月28日に、正式に業務停止処分が決定したようです。
期間は7日間となっております。詳細は今後記事にしていきますのでお待ちくださいませ!
参考サイト:宅地建物取引業法に基づく行政処分に関するお知らせ
Contents
TATERU(タテル)が受けた業務停止命令は何を意味するのか
先日、日経新聞の朝刊からTATERU(タテル)に関する報道がありました。
その報道では、国土交通省が宅地建物取引業法に基づいて、業務停止命令を下す方針を固めたことが分かったというものです。
アパートの施工、管理を手がける東証1部上場のTATERUが、建設資金の借入希望者の預金データを改ざんしていた問題で、国土交通省は同社に業務停止命令を出す方針を固めた。預金残高を実際より多く見せ金融機関の審査を通りやすくしていた。国交省は会社ぐるみで改ざんし、不正が全国に広がっていることを問題視し、行政処分に踏み切る。
参考サイト:TATERUに業務停止命令へ 融資資料改ざんで国交省
6月21日には関東地方整備局がTATERU(タテル)に対して聴聞を実施しており、処分期間や停止業務の範囲などは今後、詰めていくとされています。
宅地建物取引業法における業務停止処分は、法令に違反し業者として不適当だと認められた場合や、宅建業で不正もしくは不当な行為を行った場合などに下される処分です。
過去に業務停止処分が下されたケースを見てみると、7日間・15日間・30日間が多く見られ、1年間業務停止処分が下された企業は見られませんでした。
そのため、恐らく業務停止処分が下ったとしても30日以下の業務停止期間となる可能性が高いです。
そもそも、今回の業務停止処分は果たして適切な処分となっているのでしょうか?
可能性として考えられるのは、現在、不動産業界では様々な不正が広まっていることから、見せしめ的に処分しているのではないかということです。
TATERU(タテル)の場合、問題が発覚してからというもの新規顧客を獲得するための営業は一切行っておらず、再発防止策もいくつか立ち上げています。
また、他企業と連携して再発を防止するためのシステム開発も手掛けています。
新規顧客を獲得するための営業をストップさせ、再発防止策に取り組みながら、既存のオーナーへの対応を中心に行っています。
それでもTATERU(タテル)に対して業務停止処分が下されるということは、国交省としても不動産業界全体で起きている不正に危機感を感じていると考えられます。
ただ、そうであってもTATERU(タテル)を槍玉に挙げるのはいかがなものか、という話はあると思います。
TATERU(タテル)では新規顧客に向けた営業をストップさせていたため、2019年12月期に入ってからも営業利益や経常利益、当期純利益などが減少を続け、最新の決算では赤字となってしまっていました。
このような中で、少しでも財務状況の立て直しを図ろうと、TATERU(タテル)では所有していた販売用不動産を一挙に売却し、キャッシュを増加させる動きを見せています。
また、現在も調整中ですが連結子会社の株式譲渡も行う予定となっており、財務基盤の整理が進められています。
しかも、TATERU(タテル)では営業再開に向けて動いているとされており、近々営業を再開するのではないかと予想されていたにも関わらず、業務停止処分が下されるという報道が出されてしまっています。
そう考えると、上記でも挙げたように関連企業への見せしめとして処分されているように見えてしまっても仕方のないことです。
今回TATERU(タテル)はデータ改ざんについては実際にあったことだと認めています。
しかし、他にも業務停止処分を受けた企業と比較してみると、同じレベルの不正を行ったとは考えにくいです。
実際に、業務停止処分が下された企業の不正内容を見てみましょう。
レオパレス21
賃貸アパートの大手メーカーであるレオパレス21では、建築したアパートに住戸間を仕切る界壁がなかったり、天井部材で耐火性能が不足していたり、国が認定していない部材を使って壁を施工しているなど、建築基準法違反が発覚しています。
全3万9,085棟にも及ぶ調査を進めていますが、5月末に報告された時点で1万6,766棟にまで拡大してています。
参考サイト:施工不良で立ち退き?どう対処 レオパレス問題で注目
まだ完全に調査が終わったわけではなく、さらに施工不良の物件があると考えられるでしょう。
この事態を重く受け止めた国土交通省は3月に有識者会議を開き、レオパレス21に対して厳しい行政処分を検討しており、場合によっては業務停止処分が下る可能性が考えられます。
参考サイト:国交省、レオパレス21問題で有識者検討委員会を設置
また、具体的にどれくらいの工事期間が必要となるのかはまだ分かりませんし、施工不良の物件がかなり多いため、どれくらいで取り掛かれるかは分かりません。
そうなってくると、入居者のいない状態が続いてしまう可能性が高まり、オーナーのアパート経営が破綻してしまう可能性も考えられます。
レオパレスではオーナー側に大きなデメリットが被られているわけですが、TATERU(タテル)の場合、オーナーへの対応を真っ先に行っています。
しかも、不正建築を行っていたわけでもないため、今回の事件による空室リスクはほとんど見られません。
このことから、TATERU(タテル)がレオパレスと同等の処分を受けてしまうのは、おかしいと考えられます。
内容は全く異なっているのに処分内容が同じものだと、よく知らない人からすれば同じような不正を行ったのだと判断されてしまい、真実が見えなくなってしまいます。
そのため、国交省の判断が正しいかどうかは今一度考えるべきでしょう。
TATERU(タテル)の改ざん問題を改めて解説
続いては、TATERU(タテル)が業務停止処分を検討されている原因について改めて解説していきましょう。
TATERU(タテル)が起こした問題とは?
TATERU(タテル)は東証一部上場の企業であり、これまでにないビジネスモデルで大きく成長してきた会社で大きな注目を集めていました。
そんなTATERU(タテル)は、不動産投資を検討している顧客が金融機関からの融資を受けやすくするために、預金残高のデータ改ざんを行っていたのです。
実際の預金残高はわずか23万円だったにも関わらず、金融機関に融資の申請をする際には623万円にまで水増しされていました。
預金残高のデータを改ざんされた資料は西京銀行に提出され、融資を受けられる段階まで手続きが進んでいました。
このような改ざんが発覚した東京都内に住む50代の男性は、既に物件を購入する契約をTATERU(タテル)と結んでいたため、あとは融資を受けられれば物件を購入できるという状態になっていました。
この時の購入金額は1億1000万円という非常に大きな額で、男性は預金残高が23万円しかないことを示すための資料を提出し、預金残高が少ないことをTATERU(タテル)の社員にも伝えていたそうです。
しかし、TATERU(タテル)の社員からは、「問題ない」と言われたと話しています。
そして、数日後に西京銀行からは融資の承認が出たとの連絡を受けました。
その時に、男性は他の銀行で行われていた不正融資問題があったことを思い出し、西京銀行に問い合わせを行ったそうです
その問い合わせで預金残高のデータが改ざんされていることに気が付きました。
男性は、TATERU(タテル)との契約を解除することにしたため、実際に融資が行われることはありませんでした。
また、TATERU(タテル)は男性に対して謝罪をし、手付け金の2倍である100万円を支払っています。
TATERU(タテル)は今回のデータ改ざんに関する事実を認め、他にもデータ改ざんが行われていなかったかどうか、社内調査を進めていくことになりました。
参考サイト:アパート融資資料改ざん、TATERUでも
TATERU(タテル)の調査報告書の内容について
TATERU(タテル)は社内調査を行い、調査報告書を発表しています。
参考サイト:特別調査委員会からの調査結果報告書(要約版)受領および今後の対応に関するお知らせ
TATERU(タテル)が起こした預金残高のデータを改ざんするという問題が発覚してから、特別調査委員会が設置されました。
特別調査委員会は調査報告書を発表し、どのような状況で不正が行われたのかを明らかにしています。
その調査報告書では、営業部長や部長代理を中心とする31人がデータ改ざんを行い、2,269件ある契約件数の15%にも上る350件で改ざんが認められたのです。
もしも、このような不祥事を起こしていなければ、TATERU(タテル)の業績はこれからも伸び続けていたのではないかと考えられるでしょう。
しかし、顧客の預金残高のデータを改ざんするという問題を起こしてしまったため、信頼は失われてしまいました。
現在は、既に改ざんを主導していた人物は既に辞任しており、会社ぐるみで不正が行われているわけではなかったということが分かっています。
TATERU(タテル)が提示した再発防止策
大きな問題を起こしてしまったTATERU(タテル)は、いくつかの再発防止策を提示しています。
TATERU(タテル)の再発防止策にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
業務フローの改善
問題が起こる前のTATERU(タテル)では、営業マンが顧客から受け取った融資関連の資料を金融機関に送付するという方法を取っていました。
しかし、その方法が不正を助長しているのではないかと考えられるため、事務課を新設することにしました。
事務課で融資関連の資料を受領するだけではなく、金融機関への提出も行います。
それによって、同じような不正を防ぐことにつながるでしょう。
内部通報制度の充実
TATERU(タテル)では350件もの不正が行われていましたが、内部通報はありませんでした。
仮に内部通報ができるような環境になっていれば、不正を未然に防ぐことができ、ここまで大きな問題に発展させずに済んだ可能性も考えられます。
少しでも早い段階で問題を見つけられていれば、違う結果になっていた可能性もあるでしょう。
そのため、TATERU(タテル)では顧客や取引先のコンプライアンスラインを設け、内部通報を少しでもしやすい環境を整えるために制度を変更しているのです。
内部通報制度がしっかりと機能していけば、同じような不正が再発することは考えにくいでしょう。
業務のモニタリング
再発防止策で提示した新しい制度がしっかりと機能していることを確認するために、業務のモニタリングも行うことにしました。
業務のモニタリングは事前に告知されずに行われるため、抜き打ちの検査になります。
きちんと制度が機能した状態で業務が行われているかを確認するためには、大きな役割を担ってくるでしょう。
現在のTATERU(タテル)が置かれている状況とは
TATERU(タテル)は現在どのような状態に置かれているのか、今後はどうなっていくのかを考察していきましょう。
TATERU(タテル)は現在どのような状態に置かれているのか
まずは、TATERU(タテル)が置かれている状態について、自己資本比率を確認しながら考えていきます。
参考資料:2019年12月期第1四半期報告書
自己資本比率
自己資本比率は、自己資本(純資産)÷総資本×100という計算式で算出できます。
TATERU(タテル)の自己資本比率は以下のようになります。
約168億円÷約294億円×100=57%
自己資本比率は、その会社がどれほど安定しているのかを示すもので、比率が高ければ高いほど自己資金で事業を行えていることになります。40%を超えていれば安全圏内と言われますので、まず問題ないでしょう。
自己資本比率を計算してみると、TATERU(タテル)のキャッシュにはまだまだ余裕があることが分かります。
また、各事業のセグメントを見てみると、TATERU(タテル)では問題となったTATERU Apartment事業以外にも、スマートホテルやRobot homeなどの事業を展開しています。
2019年12月期第1四半期のセグメント売上を見てみると、以下のようになっていました。
・TATERU Apartment
売上高…約44億円、営業利益…▲約37億円
・スマートホテル
売上高…約2億円、営業利益…約7,400万円
・Robot home
売上高…約3,600万円、営業利益…▲約6,700万円
スマートホテル事業は営業利益で黒字となっています。
今後はこの事業が伸びていくのかもしれません。
さらなる成長を見込めるIoT企業にTATERU(タテル)は属している
TATERU(タテル)は、不動産会社だというイメージを持つ人も少なくありません。
しかし実際は、不動産関連事業以外にもIoTを活用した宿泊事業なども展開しています。
TATERU Apartmentの成功によって不動産会社であると思われがちですが、TATERU Apartmentで活かされたIoTは他にもまだまだ活かせる分野がたくさんあります。
不正が発覚する前から、エンジニアの数を増やそうとしていた点においても、より幅広くIoTを導入したいと考えていたことが想像できるでしょう。
TATERU(タテル)以外にもIoTやAIを取り入れた事業を行っている会社は多数あります。
例えば、クロネコヤマトのロボネコヤマトと呼ばれるオンデマンド配送サービス、ボタン1つで日用品の注文ができるAmazonダッシュボタン、傘が必要かどうかをライトの色で教えてくれるUmbrella standといったものが私たちの生活の中で使われるようになっています。
少しずつではありますがIoTやAIが私たちの生活の中で普及し、なくてはならないものになっていくことは間違いないでしょう。
IoT市場は、これからさらに成長していくと考えられています。
2018年9月にIDC Japanが発表した2022年までの日本国内におけるIoT市場のテクノロジー別支出額予測によると、2017年の支出額が5兆8,160億円でしたが2022年までにおよそ15%の成長率が見込まれているのです。つまり2022年の支出額は、11兆7,010億円に上ると考えられていることになります。
参考サイト:国内IoT市場 テクノロジー別予測を発表
スマートホームの需要もさらに高まっていくことが予想されるため、IoT市場は拡大の一途を辿っていると言えるでしょう。
IoT市場に参入するベンチャー企業も増えていることから、かなり期待できる業界の1つがIoT業界なのです。
このようなことを踏まえて考えると、TATERU(タテル)はIoT企業としてさらなる成長を見せる可能性が高いと考えられます。
今はまだ信頼を取り戻すことができていませんが、新しい事業を行う中で信頼を取り戻すための取り組みを行っています。
TATERU(タテル)も参入しているIoT業界は、大きな成長を見込める業界の1つです。
そのため、今後のTATERU(タテル)が行う事業には注目すべきだと言えるのです。